BizRobo! Basic
医療事務のタスクシフティングを後押し。汎用性の高いロボットの横展開でスピーディに医療の質の向上と医療安全を目指す
Highlight
- 4つの部署を対象に、複数体のロボットを開発
- 医療の質の向上と医療安全およびタスクシフティングを推進
- 開発したロボットを業界に横展開する「共通ロボ化」を目指す
千葉県市川市にある市川総合病院は、東京歯科大学の附属病院である。地域医療支援病院・地域がん診療連携拠点病院・災害拠点病院・臨床研修病院などの指定も受けており、地域社会から求められる総合病院として病床数は570床を有している。また、市川総合病院は歯科大学を設立母体とする総合病院の強みを活用し、総合病院において全身の健康管理を行う上でますます重要になってきている周術期口腔ケア、摂食・嚥下リハビリテーションなど口腔・歯科領域の治療について医科と歯科の医療連携をさらに充実させている。そんな同院では2018年からBizRobo!導入の取り組みを開始。同院・医療情報システム管理課のメンバーが中心となり、これまでに3つの医療現場を対象としたロボット実用化に成功した。現在も適用範囲の拡大に向け、取り組み強化を進めている。
導入背景単純作業の軽減、医師の働き方改革への貢献を見据えてBizRobo!導入を検討
第1回AI・人工知能関連の見本市でBizRobo!に出合う
東京歯科大学市川総合病院においてBizRobo!導入が検討されたのは、2018年6月だ。検討開始の1年前である2017年、高校の母校の後輩からRPAについて聞き知った西河知也氏が、都内某所で開催されたAI・人工知能関連の見本市(展示会)に参加。このときRPAを出展していたのがRPAテクノロジーズ社「BizRobo!」だった。西河氏は展示ブースで手にしたPRAテクノロジーズ代表大角の著書『RPA革命の衝撃』を熟読したという。
「当院におけるさまざまな経営課題の解決——とりわけ、医療安全での課題事項や事務職員が行っている業務における単純作業の軽減や、医師事務補助の拡大による医師の働き方改革へ、RPAが貢献できるのではと考えました」(西河氏)
2018年夏頃から導入プロジェクトが本格的に始動し、同年11月からはBizRobo!パートナーであるスカイライトコンサルティング社の支援を受けながらトライアルをスタート。2019年5月にはBizRobo! Basicの正式ライセンスを取得した。
BizRobo!を選んだ理由他社製品にはない「拡張性の高さ」が魅力
中長期的な利用範囲の拡大を念頭に置いた
西河氏は同院のRPA導入プロジェクト始動前から書籍等でBizRobo!のロボットの拡張性を把握していたこともあり、導入ツールの検討においては比較的スムーズにBizRobo!を選択できたと振り返る。
「とはいえトライアル開始以降も、市場に流通している他のRPAツールの話がたびたび聞こえてきました。それらの声と比較しても、中長期的に利用範囲を拡大していこうと考えている我々にとって、BizRobo!の拡張性の高さは魅力の1つでした。また、千葉県内で医療システム関係者が集まる定期会合では、普段からお付き合いのある大手企業がBizRobo!を導入していました。そのような民間企業での導入事例を踏まえて安心できたことも、当院での導入を後押ししたと思います」(西河氏)
対象業務放射線科における翌日準備の単純手作業をロボ化
3つの“現場”をBizRobo!の対象に
2018年度に行われた半年間のトライアル期間中、医療情報システム管理課では、ロボットの試作開発、適用範囲を拡げるためのプレゼンテーション、現場へのヒアリング等を実施した。結果として適用対象に選ばれたのは、医療事務全般を担う“医事課”、診療科内にある“放射線科”、そして患者のカルテの品質チェックを担う“診療情報チーム”の担当業務だ。当初から同課で開発を担当する土居聡氏は、次のように説明する。
「対象の1つが、放射線科で行う『造影剤CT・MRI検査前のeGFRチェック』です。通常CT・MRI検査においては、検査施行日の直近における血液検査において腎機能に異常があると造影剤の使用に注意が必要です。これまで放射線科では検査前日に、電子カルテの予約一覧からリスト出力し、eGFR値を確認していました」(土居氏)
土居氏が開発したロボットは、過去1年間分の検査データから当該患者のeGFR値だけを抽出するもの。さらには最新の値から基準値を満たしているか判定し、放射線技師に向けてリスト化・出力してくれるという。(図1)
導入効果単純な資料準備作業を始業前に完了、各業務担当者のタスクシフティングに寄与
共通ロボとして業界への波及も期待
造影剤CT・MRI検査前のeGFRチェックは「予約が多い日だと1日あたり約40件の抽出作業が発生する」と土居氏。担当する放射線技師には当該業務単体で毎回1時間程度の作業時間が発生していたが、作業がデジタルレイバーに代替されたことでその時間をより放射線技術師の本来の業務に当てられるようになり、タスクシフティング(業務移管)が進んだ。
「統計集計・印刷・チェックといった業務を“始業前”に終えておいてくれる。各業務の担当者が、1日の仕事を快適にスタートできるようになりました」(西河氏)
西河氏は、同ロボットの今後の展開について、次のような期待を寄せている。
「当院のDWH(データウェアハウス)上にあるデータは実にさまざま。『どの期間までさかのぼるか』『検査値の種類』『IDリスト』等々、掛け合わせる元のデータ・条件を他のものに置き換えれば、汎用性の高いロボットとして一般化できます。一般社団法人メディカルRPA協会が進める、医療業界全体でロボットのプロトタイプを共有し合う『共通ロボ』の観点からも、同じメーカーのDWHでなくてもデータベースからのクエリから抽出されるデータを使えば、横展開・波及が可能です」(西河氏)(図2)
こうした観点のもと、市川総合病院では同ロボットの他にも、医事課・放射線科・診療情報チーム・薬剤部を対象に「入院患者シート印刷」「アセスメントシートチェック」「看護サマリチェック」「看護管理日誌」「看護日誌統計」「院外処方受付」「退院サマリ未作成の見える化」「掲示板書き込み」等を担うロボットを実用化。現在までに9体のロボットが稼働する。(図3)
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CORPORATE PROFILE
- 社名
- 東京歯科大学 市川総合病院
- 事業内容
- 医療機関
- ウェブサイト
- http://www.tdc.ac.jp/igh/tabid/734/Default.aspx
- 話を伺った方
- 東京歯科大学市川総合病院 事務部 医療情報システム管理課
西河 知也 氏他
- ここまでの内容に加えて下記を追加
「今後について」
「現場の声」 - 印刷用PDF(フルカラー)4ページ