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日本国内は超少子高齢化社会を迎えており、多くの業界・業種で人手不足が課題となっています。今回焦点をあてる物流・運送業でも慢性的な人手不足の状況で、ECなどのネット通販増加に伴い、物流・運送業の需要も高まっています。しかし、これらの業界では人材不足が顕在化しており、多くの企業で人材確保が課題となっています。
本記事では物流・運送業の人手不足の現状とその理由や、生産性向上に向けたAI・RPAなどテクノロジーの活用や多様な人材の活用、待遇・福利厚生の改善といった対策方法について解説していきます。
物流・運送業の現状と動向
現在、国内企業の人手不足が深刻化しており、その背景には、超少子高齢化問題や団塊世代の一斉退職、非正規雇用の待遇の低さの問題、待遇の良い業界への転職、労働生産性の低さなど、さまざまなものがあります。
このような人手不足問題を解決するため、国は働き方改革や少子化対策、デジタルやロボットを活用した効率的な働き方へのシフトなどさまざまな施策を打ち出しています。しかし、人手不足は今後さらに悪化していくと考えられます。
特に物流・運送・倉庫業界における人手不足は今後さらに拡大し、需要と供給のバランスが取れない状態となり、慢性的な人手不足となるでしょう。
令和2年7月に国土交通省が公開している「物流を取り巻く動向について」の調査資料によると、2011年から継続的にGDPは上昇傾向にあります。さらに2020年、2021年は、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、モノやサービスの販売・購入がECを主としたインターネット上に移行しているため、さらに物流・運送業の需要が拡大していると予測されます。
また、EC(電子商取引)市場は、2018年には全体で18.0兆円規模、物販系分野で9.3兆円規模まで拡大しており、EC市場規模の拡大に伴い、宅配便の取扱件数は5年間で約6.7億個(+18%)増加していることがわかります。
このように急拡大するEC市場と宅配取扱数ですが、大きな課題となっているのが物流・運送業の人手不足問題です。
少子高齢化問題と物流・運送業の人手不足問題
日本の総人口はこれまで増加してきたが、2005年を境に減少傾向となっています。 今後、更に人口減少が進み、2065年には9000万人程度となる見通しです。 現在も少子高齢化が急速に進行しており、2065年には総人口の約40%が65歳以上になる見通しで、生産年齢人口は2020年比約2,600万人減となる見通しとなっています。
このままさらに少子高齢化が進むと「需要があっても供給が追いつかない」という状態に陥いるのは、誰がみても明らかでしょう。このような状態を解決するためには、物流・運送業が人手不足となっている根本的な原因・要因を深堀りして考察する必要があるでしょう。具体的にどのような要因で人手不足になっているのか深堀りしていきましょう。
関連記事:企業がすぐ始めるべき 8つの人手不足対策・人手不足解消法とは?改善事例も含めて徹底解説!
物流・運送業が人手不足になる4つの要因
国内の物流・運送業が人手不足となっているのは少子高齢化が密接に繋がっていることは説明するまでもありません。その他にも人手不足となっている要因がいくつもあるようです。物流・運送業が人手不足となっている要因と課題についてみていきましょう。
給与の低さ
給与は生活をする上で、重要な基盤となるため多くの人がより年収の高い仕事に就く傾向にあります。そのため、給与が低い傾向にある業界は人材流出がおき、人手不足に陥る傾向にあるでしょう。
パソナキャリアの「職種別の年代ごと年収推移(詳細版)」調査によると、購買・物流の平均年収は462万円となっており、年代別にみると25~29歳が327万円、30~34歳が392万円、35~39歳が442万円、40~44歳が537万円、45~49歳が516万円、50~54歳が686万円、55~59歳が744万円となっています。
物流業界では実際の輸送業務に携わる人の数が多く、力仕事が占める割合も高い傾向があります。そのため、20歳代から30歳代の若い世代については現場で輸送に携わる人が多い一方、40歳代より上の年代については物流の管理業務に携わる人の割合が多くなると考えられます。
物流業界の給与については年功序列を採用する企業が比較的多く、20歳代から30歳代前半にかけての若年層ではそれほど高収入とはいえません。
長時間労働
流通・運送業の人手不足の要因として考えられるのが、長時間労働による人材の業界離れです。トラックドライバーの約7割が40代以上という調査結果も出ており、運送業は若者を中心に人手不足となっています。
物流や運送業は基本的に休みなく運び続ける必要があるため、他の業界と比べ長時間労働になってしまう傾向にあり、なかなか休憩が取れない状態となってしまうこともあるようです。
また、新型コロナウィルス流行後、ネット通販やフリマアプリの利用が急増したことから、配送業者は人手不足とトラック不足が慢性化しています。さらに、ECネット通販やフリマアプリの利用急増によって再配達問題が深刻となり、配達業者の負担は増加し続けています。
アナログ経営によるデジタルの壁
人手不足対策の施策として業務効率化を推し進めている企業は多くいます。流通・運送業ではサプライチェーンをより効率的な流れを構築するためにデジタル化の変動に対応できる柔軟な組織づくりが必要となっています。
しかし、多くの企業は従来の組織からデジタルに対応できる柔軟な組織体制に変われず、効率的な働き方へシフトできずにいます。デジタルを活用した効率的な働き方に柔軟に対応できる組織体制とテクノロジーを駆使することにより、人手不足対策を進めることは流通・運送業界で急務となっています。
社会評価と現実の乖離
流通・運送業の大手企業となると、社会的認知があり評判や印象は良いようです。しかし、中堅・中小企業の流通・運送業となると実務でおこなっている業務の印象とはかけ離れているようです。
流通・運送業では実際にビッグデータを用いた生産性向上に取り組んでいる企業も存在します。例えば、商品管理のデジタル化をすることにより、運送する商品在庫、発送管理をデジタル化をするだではなく、AIを導入し需要予測を行うことでより効率的な商品管理を可能としています。
このようにデジタルやテクノロジーを活用した多くの業務がある一方で、従来の3Kと呼ばれる「きつい」「きたない」「きけん」の印象が強く、流通・運送業の人手不足に繋がっていると考えられます。
物流・運送業の人手不足に有効な対策方法
労働人口の減少により、特に流通・運送業界は人出不足が深刻な状態です。業務効率化による働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれる中、デジタル化の波は物流・運送業界にも押し寄せています。
このような状況の中、企業はどのような人手不足対策をしていけば良いのでしょうか。ここからは有効な人手不足対策をご紹介していきます。
AI・RPA導入による時間創出
AIやRPAなどのテクノロジーを活用した人手不足対策で大きな成果を出している企業は多く存在しています。
特にRPA(ロボティク・プロセス・オートメーション)を活用した業務プロセス自動化は時間創出が大いに期待できさまざまな分野で活用されています。
当社のBizRobo!も物流・運送業界を中心に多くの業界業種で活用され、単なる業務自動化にとどまらず余った時間を売上向上のための活動や新たな企画を考えるなど、人にしかできない業務に集中することができている、との評価の声も上がっています。ご興味のある方はお気軽にご相談ください。
労働環境を整える
人手不足対策として、社員やスタッフの労働環境を整えて「この企業で働きたい!」と思われる整備をすることはとても重要です。
厚生労働省が公開している調査データでは、社員やスタッフの労働環境を整備し社内の満足度を重視するほど人材採用などで、人材確保ができている、という調査結果も出ています。
近年、多くの企業で働き方改革の一環として、労働環境を整えることを実施しています。競合企業などの他社が働きやすい環境を整えているのに、自社が働く環境整備ができていないと採用が困難となり、人手不足に陥ってしまいます。
適正な労働時間のシフト体制管理をすることで、連続勤務を避けるなどの仕組みを作り、平等な勤務体制を整えることも重要です。
また、新型コロナウィルスなどの感染対策として事務作業従事者が在宅で業務をできるようリモートワーク環境を提供するなど、子育てや介護などが必要となる社員やスタッフにとって働きやすい環境を整備しましょう。
シニア世代・外国人労働者の積極的な採用
日本国内の人手不足を解消するには、今まであまり重視してこなかった層への採用も考えていく必要があります。たとえば、高齢化社会の日本ではシニア世代は重要な労働力となります。
また、グローバル社会が進む中で外国人労働者の採用は、小売業の海外展開や観光者向けの対応など重要される人材となってくるでしょう。
一方で、採用幅を広げるということは、これまで以上に雇用環境の見直しもしなければなりません。特に外国人の採用では日本人とは異なる法の遵守が必要で、先に環境整備を進める必要があります。どのような人材でも気持ちよく働くことができる環境を整えることは、令和時代ではとても重要な人事戦略となるでしょう。
物流業界での導入事例
松浦通運株式会社
玄界灘に面した佐賀県北部の唐津市に本社を置く松浦通運株式会社は、この地域で最大規模の運送業者。自社とグループ会社で手がけるトラック輸送をはじめ、唐津港での港湾荷役や倉庫・通関業などの総合物流サービスを展開している、社員数およそ280人の企業です。
自社主体で運用可能な業務改善のツールとして、パソコン上の定型作業を自動実行できるRPAに着目。安全運行徹底を図る画像解析のAIの採用にあたって、映像を自動転送できる方法が必要となったこともあり、RPAツール「BizRobo! Lite+」を採用し、併せて社内開発による活用範囲の拡大に取り組みました。
プログラミング未経験の若手社員が大半を開発した同社のソフトウェアロボットは現在、フルタイム従業員1人分にあたる年間約1,900時間相当の作業を自動実行し、現場社員の負担軽減を実現しました。今後は残業時間の抑制や、AI-OCRとの併用による紙書類のデジタル化にも応用される見通しです。
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鴻池運輸株式会社
物流企業として140年余の歴史を持つ鴻池運輸株式会社(大阪市中央区)は、業界で深刻化している人手不足を受けた生産性向上策として、紙帳票などをデジタルデータ化するAI-OCRと、データの定型的な処理をソフトウエアに委ねるRPAに着目。
目視による確認作業が運用上の負担となるAI-OCR以外の手法を検討した結果、自社グループが開発した新サービス「デジパス」の採用を決めました。帳票類をスキャンすると短時間で変換・確認済みのデータが届くデジパスと、RPAツール「BizRobo!」の併用により、1日2時間を要した在庫管理関連の業務を、ほぼ完全に自動化することができました。
物に添えた “紙”で情報を伝える文化が根強い業界におけるデジタル化の加速と、それに伴うリソース創出効果が期待されています。
関連記事:AI-OCRの課題から現場を解放。「人と技術のハイブリッド」で加速させる紙帳票のデジタル化
まとめ
いかがでしたでしょうか。国内の流通に関わる物流・運送業界は深刻な人手不足の状況です。しかし、自社の現状課題をしっかりと把握し、どのような改善をすれば良いか明確にすることによりさまざまな対策方法がみえてきます。
また、近年多くの企業で導入されている新たなテクノロジーや業務改革による改善の余地はどの企業にもあるでしょう。ぜひ、RPAやAIによる業務プロセス改善を検討されている方は当社へお気軽にご連絡頂けますと幸いです。