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2023年のインボイス制度の導入や2024年の法改正などにより、請求書を電子化する必要性が高まっています。紙の請求書でやり取りしている企業は、データのやり取りが必要になるでしょう。電子化は、文書の作成や管理のコストを削減できるため、企業にとってメリットが大きいといえます。
ただし、請求書の電子化は「電子帳簿保存法」や「e-文書法」の法律に則って実施することが重要です。それぞれの法律の対象となる文書を把握し、適用要件などを踏まえたうえで対応しましょう。
この記事では、請求書の電子化における保存方法や法律改正を踏まえたポイントを解説します。ぜひ参考にしてください。
請求書の電子化は法律的に有効
法律上、電子化された請求書は有効です。1998年7月から施行された「電子帳簿保存法」において、一定の要件を満たす場合、請求書の電子データの送付や保存が認められています。請求書を電子化することで、書類管理のコストダウンや業務の効率化、時間差のない取引などを実現できます。
電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法とは、書類の電子化による保存を認める法律です。一定の条件を満たすことで、帳簿や決算書、請求書などの国税関係帳簿・書類を電子データとして保存できます。電子帳簿保存法における保存は、以下3つの区分に分けられます。
・電子帳簿等保存:パソコンや会計ソフトなどで作成した電子データをそのまま保存する
・スキャナ保存:請求書をはじめとする書類をスキャンして保存する
・電子取引:メールやWebサービスで受け取った電子データをそのまま保存する
電子帳簿保存法の対象事業者
電子帳簿保存法は、原則「すべての法人と個人事業主」が対象です。ただし、紙媒体の保存方法を採用している電子データがない法人や個人事業主は、対象外となります。
請求書や帳簿書などを電子化して保存すると、書類作成のコストや手間を軽減できます。電子書類の保存は、会計事務所に依頼する費用や人員を割くコストを抑えたい中小企業におすすめです。
電子帳簿保存法の対象書類
電子帳簿保存法の対象となる書類は、以下のとおりです。
・国税関係帳簿:仕訳帳や総勘定元帳
・決算関係書類:損益計算書や貸借対照表
・取引関係書類:領収書や契約書
電子データで授受された取引関係書類は、電子書類と呼ばれます。
請求書を電子化して保管するための要件
電子帳簿保存法において、電子化した請求書は不正や第三者の介入を防ぐことが求められます。そのため、以下2つの要件を満たさなければなりません。
・真実性の確保:改ざんされていない
・可視性の確保:誰でも視認、かつ確認できる
上記2つは、保存区分ごとに詳細な要件が求められます。「真実性の確保」の要件には、以下のいずれかの措置を行う必要があります。
1. タイムスタンプが付された後に、取引情報の授受を行う
2. 取引情報の授受後、速やかにタイムスタンプを付す(もしくはその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかにタイムスタンプを付す)とともに、保存を行う者または監督者に関する情報を確認できるようにしておく
3. 記録事項の訂正・削除を行った場合、事実および内容を確認できるシステム、もしくは記録事項の訂正・削除ができないシステムで取引情報の授受・保存を行う
4. 正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規定を定め、規定に沿って運用する
「可視性の確保」の要件は、以下のとおりです。
・データの保存場所にパソコン等の電子計算機、プログラム、ディスプレイおよびプリンタを用意し、画面・書面に整然とした形式および明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておき、それぞれの機器の操作マニュアルを備え付ける
・電子計算処理システムの概要書を備え付ける
・検索機能を確保しておくこと
検索機能は、真実性の「2.」「3.」の要件がダウンロードに対応できる場合、不要となります。また、保存義務者が小規模な事業者、かつダウンロードの求めに応じられる場合も検索機能は必要ありません。
e-文書法とは
e-文書法とは、紙媒体の保存が義務付けられている文書のデータ保存を認める法律です。e-文書法は通称であり、正式には2005年に施行された、以下2つの法律を指します。
・「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」
・「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」
1980年〜1990年代にかけてのパソコンやインターネットの普及、2000年の「e-Japan構想」などを経て、多くの分野で電子化が推進されます。e-文書法は、日本経団連をはじめとする民間企業等からの強い要望により制定されました。
e-文書法は約250の法律に適用されるため、さまざまな文書のデータ保存が認められます。e-文書法と混同されやすい「電子帳簿保存法」は、国税に関する帳簿書類のみのデータ保存を認める法律です。
e-文書法の対象となる文書の例
e-文書法の対象となる文書の例は、以下のとおりです。
・有価証券報告書
・経営、人事、予算の関係資料
・稟議書
書類を作成する際は、e-文書法と電子帳簿保存法に則り、6つの要件を意識して作成する必要があります。
e-文書法の適用要件
e-文書法における適用要件は、以下の4つです。経済産業省が前提となる技術的基本要件を定めています。
・見読性の確保:文字の可読性
・完全性の確保:情報の改変がされていない
・機密性の確保:文書へのアクセスの制御
・検索性の確保:目的に応じた情報を見つけられる
上記のなかで、必須となる適用要件は「見読性の確保」のみです。各要件の具体的な内容は、関連する各府省令によって異なります。対象文書の種類によっても、満たすべき適用要件は異なります。
e-文書法と電子帳簿保存法の違い
e-文書法と電子帳簿保存法は、対象文書と保存要件が異なります。e-文書法は、民間企業における保存義務のある法定文書が対象です。電子帳簿保存法は、財務省と国税庁の管轄する、法律の文書が対象となります。それぞれの保存要件の詳細は、前述した「e-文書法の適用要件」と「請求書を電子化して保管するための要件」を参照してください。
また、e-文書法と電子帳簿保存法は「法律が適用される文書」の範囲が異なります。e-文書法は、約250の法律文書全般に適用されますが、電子帳簿保存法が適用されるのは国税に関する帳簿書類のみです。
電子帳簿保存法は、税務署長による承認の要否が必要でしたが、2021年の電子帳簿保存法改正により、2022年4月1日以後は廃止されています。
法律改正を踏まえた請求書の保存方法
請求書の保存は、法律の改正に対応する必要があります。ここでは、電子データと紙の請求書の保存方法を解説します。
電子データの請求書の保存方法
電子データの請求書の保存方法は、以下の2つです。請求書は発行・受領どちらも同じ方法で保存します。
・電子データのまま保存する
・電子データを紙に出力して保存する
受領から保存までの流れは、以下のとおりです。
1.受け取ったデータをシステム上にアップロードする
2.撮影から2ヶ月以内に、画像データにタイムスタンプを付与する(訂正削除の記録が残る場合は、タイムスタンプ付与は不要)
3.法的期間内システム上にデータを保管する
電子データのまま保存する場合は、電子帳簿保存法の電子取引方式に則って行います。会計ソフトをはじめとするソフトを使い、作成した電子データをそのまま保存しましょう。電子データを紙に出力して保存する方法は、電子帳簿保存法の改正により、2024年1月以降に認められなくなります。
紙の請求書の保存方法
紙の請求書の保存方法は、以下の2つです。
・ 紙のまま保存する
・ 紙の請求書をスキャンし、電子データで保存する
受領から保存までの流れは、以下のとおりです。
1.紙原本を撮影、もしくはスキャナで読み込み、データをシステム上にアップロードする
2.撮影から2ヶ月以内に、画像データにタイムスタンプを付与する(訂正削除の記録が残る場合は、タイムスタンプ付与は不要)
3.法的期間内システム上にデータを保管する
紙の請求書は電子データと同じく、請求書は発行・受領どちらも同じ方法で保存します。紙の請求書をスキャンして保存する方法は、電子帳簿保存法におけるスキャナ保存方式を利用した方法です。タイムスタンプ付与型のシステムを利用して保存すると、自社の特別な対応が不要となります。
インボイス制度開始後の注意点
請求書は、2023年10月より開始するインボイス制度に対応しなければなりません。同制度が導入されると、仕入税額控除を受ける際に、請求書控えの作成や保存の義務が発生します。2023年は従来の請求書の作成方法だけでなく、業務の在り方が大きく変わる可能性があります。以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
この記事のまとめ
電子帳簿保存法は、2022年の改正によって電子化を促す要件緩和が進められました。紙の請求書を保存する方法は、紙のままの保存、もしくは紙の請求書をスキャンした電子データの保存の2つです。
2023年10月以降のインボイス制度の導入によって、請求書の電子データ化を利用する企業の増加が予想されます。さらに、2024年1月以降の電子帳簿保存法の改正によって、電子データを紙に出力して保存する方法が認められなくなります。
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