BizRobo! ブログRPAの開発や運用に役立つ情報を配信
多くの業界で人手不足が課題としてあげられる中、病院も同様の課題に直面しています。さらに、少子高齢化や新型コロナウイルス感染拡大の影響で医療ニーズは多様化し、現場の負担はますます重くなっています。
本ブログでは、先日開催したセミナーのレポートを通じて、現場の負担を減らすために有効な「RPA」についてご紹介します。活用のメリットや病院内での導入事例と合わせて解説しますので、ぜひご一読ください。
ライター紹介:
- 長澤 史佳(ながさわ ふみか)
- 大学在学中に「ハフポスト日本版」と「Forbes JAPAN」にて記事執筆・編集・翻訳などを経験後、新卒で株式会社PR TIMESに入社し、PRプランナーとして化粧品メーカーや食品メーカーを担当。2022年よりRPAテクノロジーズ株式会社に入社し、コンテンツ企画や広報を手掛ける。
登壇者紹介
RPAテクノロジーズ株式会社
代表取締役執行役員社長
大角暢之
2000年にオープンアソシエイツ株式会社(現・RPAホールディングス株式会社)を設立。その後、2013年にビズロボジャパン株式会社(現・RPAテクノロジーズ株式会社)を設立し、代表取締役社長に就任。現在、同社代表取締役執行役員社長、一般社団法人日本RPA協会代表理事、シャイン株式会社社外取締役を務める。
一般社団法人メディカルRPA協会理事
村山典久
国立大学法人滋賀医科大学経営等担当理事、同大学学長補佐を経て、2013年にアクセンチュア株式会社ヘルスケア部門日本統括マネージングディレクターに就任。現在、学校法人慈恵大学学長アドバイザー、スカイライトコンサルティング株式会社事業開発特別顧問、RPAテクノロジーズ株式会社顧問、一般社団法人メディカルRPA協会理事を務める。
1. 「RPA」とは
日本では、労働人口減少・高齢化・人件費高騰などの社会問題が発生しており、その影響から、現場では離職・採用難などによる生産性低下が懸念されています。
「ロボット・プロセス・オートメーション」の頭文字を取った「RPA」は、人間と同じようにオフィスワークに適用し、まるで人員を増やしたような効果が得られることから、都合の良い労働力「デジタル労働者(デジタルレイバー)」と呼ばれています。
人間がコンピュータ上で繰り返し行っている検索・入力・集計・メール等の作業手順を記録(覚えさせる)ことにより、人間の代行が可能となります。ツールの習得は必要ですが、プログラミングの必要がないため、習得ハードルは低くなっています。
また、ロボットなので、
- 仕事を処理するスピードが速く、ミスしない
- 24時間365日、文句も言わず働き続けることができる
- やめることなく、永遠と働いてくれる
- 業務を教えることで、労働力を増やすことができる
といった特徴があげられます。
小売・製造・流通など、様々な業界でRPA導入が進められていますが、医療業界ももちろんその中のひとつです。タスクシフトを担う働き手として、大学病院だけでなく、クリニック等でも導入が進んでいます。業務効率化、医療の質向上、収益の向上などが見込めますので、ここから詳しく解説していきます。
2. なぜ、医療業界で「RPA」が必要なのか
① 圧倒的な労働力不足
現在、日本の労働力は質・量ともに危機的な状況にあります。日本はG7の中で労働生産性が最下位であり、また、労働力人口の大幅な減少が見込まれることから、中長期的な観点では事業体における持続的成長の危機に直面しています。
医療業界は、その中でも特に人材不足が深刻になることが予想されており、2030年には187万人分の人員が不足すると想定されています。一方で、今後30年間、患者数に大きな変化はないと予想されているため、30年後、このままでは30%減の労働力で現在と同等レベルの患者への対応が求められることになります。
② 国からの是正勧告/過重労働回避、超過勤務削減
2019年に労働基準法が改正され、超過勤務時間に上限規制が適用されました。しかし、医師を含む一部の事業・業種には上限規制の適用まで猶予が与えられていました。そのため、医師は2024年から上限規制が適用されます。
現在、病院勤務医の40%が上限規制の是正対象となっており、対策が急務となっています。業務を見直し、ロボットに置き換えられる業務は置き換えていく必要があると考えています。
③ 医療安全の確保/許されない人為的な医療ミス
労働力が不足していっている中で、医療ミスも相次いでいます。検査結果見落としにより患者が1年間放置された例、がん疑い見落としで患者が死亡した例などが発生しており、人為的なチェックに頼るのはもはや限界となっています。
ミス防止の対応策として医師事務支援機能強化等が実施されていますが、人間が行う限り100%ミスを防ぐことはできません。
3. ロボットの活用で想定される効果
医療業界でロボットを活用することで、大きく分けて3つの効果が想定されています。
① 業務効率化
- ・効果イメージ
- 医療事務領域でのロボット業務代行
- ・効果例
- 「翌日入院患者帳票印刷」ロボで、平均72人分の患者プロファイルを印刷
- 100分/日の業務をデジタルレイバー化し、約390時間/年の業務効率化
- 「アセスメントシートのチェック」ロボで、平均50人の退院患者の入院診療計画書のチェック
- 2時間/日の業務をデジタルレイバー化し、約520時間/年の業務効率化
② 医療の質向上
- ・効果イメージ
- 医療における人為的なミスをロボットが事前にチェック
- ・効果例
- 「要注意初見見逃しチェック」ロボで、毎日CT、MRIに関する要注意初見が診断され、対応のない患者リストを作成
- 主治医に紙ベース、メールベースで対応を促す
- 「eGFR値チェック」ロボで、CT、MRI検査で造影剤を投与する患者のeGFR値をチェックし、規定値以下でロボットが放射線技師に警告する
③ 収益向上
- ・効果イメージ
- 診療録やレセプトを分析し、オーダリング漏れやコメント漏れによる算定漏れ防止を促進する
- ・効果例
- 「指導科・管理科取り漏れチェック」ロボを利用し、悪性腫瘍、肺血栓塞栓等の患者や特定の薬剤を投与している患者で、算定要件通りの処置を行っているにも関わらず、指導科や管理科が請求できていない患者の抽出
- 「AI連携による請求漏れ防止チェック」ロボで、AIを活用したレセプト点検の結果を踏まえ、RPAが修正事項をレセプトに自動反映(実証実験開始予定)
4. 導入事例のご紹介
- ・東京歯科大学 市川総合病院
- これまでに入院患者シート印刷ロボット、診療情報管理市向けアセスメントチェックロボットなど、多くのロボットを作成し、すでに2,453時間/年の業務時間削減を実現しています。
詳細はこちら
https://rpat.tms-movie.com/case/case46/
- ・名古屋大学医学部附属病院
- 1,000床ほどあるとても大きな病院の事務部門にて、9,800時間/年の業務時間を目指してロボット開発を行っています。
詳細はこちら
https://rpat.tms-movie.com/case/case036/
他にも医療業界のRPA導入事例を公開しておりますので、下記よりご確認ください。
https://rpat.tms-movie.com/case/?c=2&industry=22
5. この記事のまとめ
- RPAは、人間と同じようにオフィスワークに適用し、まるで人員を増やしたような効果が得られることから、デジタルレイバーと呼ばれている
- 医療業界では、2030年には187万人分の人員が不足すると想定されており、業務の見直しが急務となっている
- 病院内での業務をロボットへと置き換えることで、業務効率化、医療の質向上、ミス防止などが期待できる
今後もWebセミナーやすでに実施したセミナーのアーカイブ配信もご用意しております。ご不明点やRPAについてご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。