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2018年に総務省がはじめて自治体へのRPA(Robotic Process Automation)導入支援を予算化して約5年経ちました。2020年に実施された「地方自治体におけるAI・RPAの実証実験・導入状況等調査」によると、RPAを導入済みの都道府県は85%と、多くの自治体が導入・活用しています。
そこで本記事では、各地での様々な課題に対してどのようにRPAが寄与し、効果・効能が上げられたのか、過去のRPA実証実験などをまとめてご紹介します。また、総務省の掲げる「スマート自治体」ではRPAやAIの活用だけではなく、自治体BPRによる抜本的な業務改革が必要となっているようです。最後にスマート自治体の構想と未来についても総務省から提供されている資料を参考にご紹介します。
自治体でRPAは活用されているのか
2017年のRPAブームを皮切りに民間企業ではさまざまなRPAプロジェクトが発足し、業務プロセス改革が進められました。また、民間企業から成功事例や失敗事例が出てくることにより、政府や自治体でもRPAを活用した業務プロセス効率化に向けた動きが多数出てきています。
しかし、自治体でのRPAの取り組みによる成果は出ているのでしょうか?
自治体で活躍するRPA(デジタルレイバー)の”今”
各自治体でさまざまな課題がありますが、その中でも特に大きな課題となっているのが今後の労働力不足の課題です。
自治体が支えている住民生活に関わる行政サービスを提供していく中で、地方の人口減少は大きな問題です。地方での過疎化や少子高齢化により人口が減少するとともに、労働力不足もさらに加速しています。自治体業務では、定型的な業務に多くの労力がさかれるため、これらの課題解決のためのソリューションとしてRPAが使われ始めています。
RPA導入やAIロボティクス導入・活用していくことで、自治体の労働力不足の課題を改善し、スマートな自治体へ転換していくことができると考えられています。
神奈川県政策研究センターの調査による「全国自治体におけるRPAの導入状況」では、RPAの導入状況をみると、何らかのかたちで「導入済」または「導入を検討中」の自治体が大半(9割前後)となっています。
(出典:全国自治体におけるRPAの導入状況(神奈川県政策研究センター、2019 年 10 月))
自治体によるRPA導入では、給与支払い報告書の入力支援やワンストップ特例申請の省力化などが業務プロセス改善の対象とされ、職員の作業は最大9割低減できることも実証されているようです。
しかし、課題として動作環境等を含めた業務フローの見直し、共同利用を見込んだ様式の標準化などがあります。また、他システムとの接続を考慮した出力、OCRの識字率を踏まえた最終確認作業、利用者を意識した操作性なども考慮する必要があります。このような課題に対して導入されているのが業務プロセスを根本的に見直し業務改革を可能とする自治体BPRです。今回、詳細説明は省きますので、気になる方は下記リンクからご確認ください。
関連記事:自治体BPR(業務改革)とは?自治体の業務改革を進める上で必要な5つのポイントと成功事例を徹底解説!
現在RPAは導入だけに留まらずさまざまな形で各自治体での利用が進んでいるようです。それでは、各自治体のRPA事例についてみていきましょう。
自治体のRPA事例
自治体のRPA事例には具体的にどのような活用方法があるのでしょうか?
今回の事例では長年に渡り日本のRPA業界を牽引してきたRPAテクノロジーズ社の「BizRobo!」や「BizRobo!」OEMソリューションである「SynchRoid(シンクロイド)」や「EneRobo(エネロボ)」の事例を参考にまとめています。
広島県広島市
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広島市役所窓口を訪れる住民への対応、税金や福祉、公共事業にまつわる業務など、市の仕事内容は幅広く行財政改革の一環としてコスト削減に取り組んできたが、少子高齢化の影響により、職員ではすべて対応が難しい状況に差し迫っていました。
さらに人手不足の状況に、市の運営や住民とのつながりなどの知見を持った職員が事務作業などの定型的な業務に時間をとられ、新たな事業の企画・立案など「職員でなければできない仕事」に注力できないという課題がありました。
このような課題に対し、広島市はRPAとOCRを組み合わせたソリューションを活用することで、既存業務を見直し、業務効率化を進めた。2021年3月時点では13業務で20体が稼働しており、主な対象業務は書類の入力作業の自動化となっています。さらに時間削減効果のみならず、間違いがないよう神経を使って入力していた作業をEneRoboで効率化することで、職員の精神的・身体的な負担感も軽減しているようです。
愛知県大府市
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愛知県大府市では日々の膨大な業務量のため、職員の時間外労働が常態化していました。そのため、事務作業の中でも特に定型業務の効率化が大きな課題となっていました。
職員の業務効率化に向け、ITシステム導入も何度も検討されていたものの、費用対効果の観点で検討する中で、導入コストが大きなボトルネックとなりITシステム導入にも手が付けられない状態でした。
「すでに主だった業務へのシステム導入は済んでいたので、とりわけ細かな業務に関してシステムを入れるとなると、費用対効果の面で疑問が残りました。そんななか、ここ数年の間でよく耳にするようになっていたRPAは、我々にとってまさしく“渡りに船”だったわけです」(総務部総務課情報システム係総括係長・新美清和氏)
RPA導入に向けた実証実験では高齢障がい支援課の「要介護者データ処理・手紙作成業務」、保険医療課の「年金特徴開始通知作成業務」で時間削減効果が見込まれ、対象となっている3業務合計での年間削減効果は160時間超に達しています。
千葉県市川市
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千葉県市川市でRPA導入の検討が本格的に開始されはじめたのは、2018年4月頃でした。当初RPA推進業務を任されていた企画部 行財政改革推進課(現・行政経営課)は、自治体特有の課題を抱えていました。当時同課に在籍していた森本豪氏は、市川市での導入理由を次のように説明しています。
「どこの自治体でも同じだと思いますが、職員は恒常的にある窓口対応や膨大な作業量に対応しています。特に繁忙期は、職員の時間外勤務が常態化しがちです。市では、職員の給与をはじめさまざまな支出が市民の皆様の税金によってまかなわれているので、職員の健康維持を図りつつ、貴重な人件費を最大限に活用しなければならないという課題がありました」(森本氏)
このような課題を解決すべく、市川市ではさまざまな課でのRPA活用が進んでいます。たとえば、こども福祉課では、子ども医療返納額内訳作成業務や児童手当年金情報照会業務、児童手当・子ども医療 住民税照会業務などに活用されており、年間の削減効果は約500時間と見込まれています。
経済産業省
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国の政策立案と実行に携わる経済産業省は、国会で認められた予算と、法令に基づく定員の範囲内で運営されています。省内では、限られた人的リソースで政策の実現に向け、活動しなければなりません。そのため、内部的な事務へのIT投資は遅れがちとなっています。
そのような状況の中、積極的に業務改革を進めるべく2018年7月に、行政手続や省内業務においてテクノロジーを活用した生産性向上の取り組みが必要と判断し、業務プロセス改革に向けた業務内容の見直しやデータ利活用などを進めるため「デジタル・トランスフォーメーション室」を設置しています。
こうした動きの中、経産省の人事事務と働き方改革を担う大臣官房秘書課は、省内への普及も視野にスモールスタートでの業務改革に着手。具体的な手法としてRPAに着目し、導入を進めました。
実地でRPAによる検証をおこなった結果、以前はひとが手作業で1件につき10分程度を要していた登録作業務は、デジタルレイバーに代替することで1件につき約3分に短縮することが可能となりました。さらに、RPAを活用することで転記で単純な間違いを起こす可能性が減り、ダブルチェックやトリプルチェックといった確認作業にかかる負担も軽減されています。今後、手作業でおこなっていた登録作業をデジタルレイバーに任せることにより、“手放し”で他業務に専念できるようになる見込みとなっています。
自治体業務のRPA適用事例
ここからは自治体業務に使われているRPAの業務適用事例を一部ご紹介します。自治体でのRPA活用を検討されている職員の方は、参考として利用していただければ幸いです。
公共料金の支払い事務
<課題>
公共料金には「早収料金制度」があり、期限内に支払いができない場合、料金が高くなってしまうため、すばやく伝票を作成しなければならないが、人力作業では多くの時間がかかっていました。また、担当職員にとって精神的なストレスとなっていた。
<導入前>
- 担当者は市内の全ての部署から公共料金情報を収集
- 財務会計システムにログイン
- システム上に情報を手入力
<導入後>
- 担当者は市内の全ての部署から公共料金情報を収集
- 引き落とし情報のファイルをロボット専用のファイルに格納
- ロボットはファイルを読み込み、財務会計システムにログイン
- 財務会計システムに情報を入力
<導入効果>
・業務時間は年間100時間から50時間に変化し、50時間の余剰時間を創出
・「期日を気にする必要がなくなった」と、現場担当者からは定性的な評価を得た
・担当者の作業はエラーの確認のみとなった
現況調査資料を作成する業務(固定資産税・都市計画税)
<課題>
書類のフォーマットが統一されており、ロボットに任せやすいと判断。将来的に税率が変わってもロボットのパラメータを変更するだけで対応可能なため、システム化よりRPAに任せる方針でRPA導入に至った。
<導入前>
- 担当者は調査地点の洗い出しを行う
- 調査地点を社内システムへ入力
- 社内システムからデータを出力(住宅地図/航空写真図/地番家屋図/土地家屋台帳)
- 上記の情報をもとに調査用資料を作成し、印刷
<導入後>
- 担当者は調査地点を洗い出し、まとめてエクセルに記入
- ロボットはエクセルのデータを参照し、複数の調査地点に対して一斉に社内システムからデータを出力(住宅地図/航空写真図/地番家屋図/土地家屋台帳)
- 上記の情報をもとに調査用資料を作成、印刷
<導入効果>
・毎年2,160時間かかっていた担当者の業務時間を、半分の1,080時間に削減
・印刷したい場所の地番をあらかじめまとめて、エクセルで作成しておくことで、ロボットが一斉に資料を作成できるような業務フローに変更できた
インターネット受付情報印刷業務
<課題>
毎年3月,4月に業務量が一時的に増大し、残業しなければならない状態となっており、加えて作業内容がルーティンワークのため業務に対する職員のモチベーションが下がっていました。
<導入前>
- 住民は水道・ガスの申込情報をデータで送付
- 担当者はデータを紙媒体に印刷、申込件数を集計
- 手続き終了後、一定期間申込データを保管した後に、申込データを削除
- 担当者は関係者に対し、水道・ガス申込情報をメールで通知
<導入後>
- 住民は水道・ガスの申込情報をデータで送付
- ロボットはデータを紙媒体に印刷、申込件数を集計
- 手続き終了後、申込データをPDFとして保存した後にデータを削除
- ロボットは関係者に対し、水道・ガス申込情報をメールで通知
<導入効果>
・他2業務と合計して、年間約500時間の余剰時間を創出
・データを自動でPDFとして保存する機能を加えることで、業務プロセスがより効率的になった
・申込情報を漏れなく正確に管理することが可能となった
・職員のモチベーション向上に貢献した
広島県三原市
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広島県中央東部に位置し、人口約8万9,000人を擁する三原市は、2019年にRPAの導入を決定。RPAテクノロジーズ株式会社が提供するツール「BizRobo!」をベースとした、ソフトバンク株式会社のRPAソリューション「SynchRoid」を選定しました。
職員主体の開発運用体制を確立した現在では、市民から受け付けた電子申請の登録や、外部機関への情報照会など約40業務に活用し、年間約9,700時間相当の余力を創出しています。
デジタル化推進の専門部署設置や、職員全員が関係する作業のロボット化、全庁的な業務改善意識の高まりなどに伴ってRPAの開発依頼は年々増加を続けており、今後は開発者の育成にも注力していく計画です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。業務改革を進める上でAIやRPAの活用は必要不可欠となっています。人手不足の時代だからこそ、デジタルレイバーと協働し職員の職場環境も改善していく必要があります。これからRPAを自治体業務で導入検討する方は、以下からお気軽にご相談ください。
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