BizRobo! ブログRPAの開発や運用に役立つ情報を配信
毎年、確定申告業務で税理士が非常に忙しくなる2月から3月。通常業務と並行して行わなければいけないため、業務の負担が大きくなってしまい、悩まれている方も多いのではないでしょうか。
今回は、先日開催したセミナー「確定申告業務で500時間削減できたRPA活用の秘訣とは?
税理士法人の事例を交えて3社対談形式でご紹介」のレポートをお届けします。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション ※1)を活用することで業務効率化が実現した事例をご紹介しますので、「来年こそは余裕をもって確定申告を乗り越えたい」「税理士業界のDX化を進めたい」という方はぜひご一読ください。
※1 パソコン上での一連の作業を効率化する、ソフトウェアのロボット
ライター紹介
- 長澤 史佳(ながさわ ふみか)
- 大学在学中に「ハフポスト日本版」および「Forbes JAPAN」でインターンとして記事執筆・編集・取材・翻訳などを経験後、2020年に新卒で株式会社PR TIMESへ入社し、PRプランナーとしてコスメブランドや食品メーカーなどを担当。2022年よりRPAテクノロジーズ株式会社に入社し、コンテンツ企画、広報を手掛ける。
登壇者紹介
- 株式会社bpコンサルティング 代表取締役 佐久間 隆氏
- 税理士法人 畠経営グループ 効率課 主任 嶋長 雄大氏
- 株式会社シイエム・シイ 経営企画部 KAIZEN FARM事業推進室 佐々木 友梨氏
税理士業界が抱えている課題
・税理士試験の受験者数は年々減少。他業界からの人材流入も少なく、慢性的な人材不足が続いている
・業務の専門性が高いかつ顧問先ごとに処理方法などが異なるため、属人的な対応になりやすい
・高齢化が進んでおり、既存の体制に変更をもたらすような新システムの導入に消極的
こうした課題を抱える中、株式会社bpコンサルティングでは3年前からRPAを導入し、多くの業務自動化を実現してきました。例えば、異なる会計システムと税務システムを使用しているため、RPA導入前の確定申告時期には会計データの確定後に税務申告システムに手作業で数字を転記していたそうです。RPA導入後は数字の転記がすべて自動化されたため、業務の負担を大きく減らすことに成功しました。
税理士業界でRPAができること
税理士が年間で稼働する中で、RPAによる自動化が可能なのは…
- クライアント開業手続き:税務関連の諸手続きの書類作成
- 経営分析の作成(月次資料の出力):リストに基づいて定期的に出力し、印刷する作業
- 進捗管理・通知:データを基にエクセルに落とし込み、グラフ化して社内にチャット配信
- 医療費データ取り込み:領収書をエクセルに転記し、税務申告システムに取り込み
- ふるさと納税データ取り込み:XMLファイルでデータ取り込み
- 青色決算書転記:異なる会計システムと税務システムを連携させ、データを転記
- 申告書・総勘定元帳の作成:申告済みのデータを出力し、所定のフォルダにPDFで格納
上記の中でも、特にご紹介したい3つの事例を詳しくご紹介します。
クライアント開業手続き – 株式会社bpコンサルティングの事例
Before:担当職員がクライアントに聞き取りを行ったり資料をお預かりしたりしていたものの、一度で情報を収集するのが難しかった。情報が不足することで、その後の開業届などの作成に時間がかかってしまっていた。
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After:クライアントから直接入力してもらうことで情報の不足をなくし、その先の一連の作業もすべてロボット作業に変わったため、情報のばらつきなどがなくなり業務が効率化された。
青色決算書転記 – 株式会社bpコンサルティングの事例
Before:別々の会計システム(弥生会計)と税務システム(OMS)を使用していたため、確定申告時期にはデータを手作業で転記していた。繁忙期に膨大な件数を手作業で転記しなければいけないため、スタッフの負担が大きかった。
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After:RPAにより転記ミスがなくなり、チェック方法も変化した。それに伴って、転記やチェックにかけていた時間をより付加価値の高い作業をする時間にかけられるようになった。
電子申告済み申告書、総勘定元帳の製本 – 株式会社bpコンサルティングの事例
Before:確定申告後、すべての納税者分をPDF化し製本するため、膨大な時間がかかっていた。システムにログインするだけで動作が鈍くなるなどの弊害や、手作業のためスタッフが多くの時間を割いていた。
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After:PDF化は夜間や休日に行うことが可能になった上、順序の入れ替え等が不要になり、大幅な業務効率化に成功した。また、ロボットの開発も約1日で終わったため、かなりコスパが良かった。
RPA導入から運用までの成功の取り組み– 税理士法人畠経営グループの例
税理士法人畠経営グループではRPAを導入して業務効率化を図っていますが、今後も「判断が必要ない定型業務はロボットに任せていく」という方針となっています。合わせてペーパーレス化や電子化を推進し、品質は担保しながら、よりロボットが活躍できる領域を増やしていきたいとのことです。
質問:RPA導入にあたり、どのように推進していったのか
システムエンジニアという枠で人員を採用し、ロボット開発をお願いしています。育成する方法もあると思いますが、新たに採用することでロボット開発のスピードが速く、社内でRPA以外にもシステム関連で困っていたことがあったので、その部分も対応してもらうことができました。
会計事務所では、税務監査スタッフ以外でエンジニアを採用するのはハードルが高いと思いますが、社内的なメリットがありますし、クライアントの要望にお応えすることもできるので、外部へのDX支援として新たな収益の事業を作り出せるというメリットもあったと感じています。
質問:RPA導入をはじめてから、どんな苦労があったか
ロボット開発やエンジニアの仕事はこれまで会計をやってきた人からすると見えづらいところもあるので、どうやってアピールしていくかがポイントだと思います。ロボットで時間短縮になったことを実感してもらったり、時短になった事例を社内で積極的に公開していったり、成果を残していることを地道にPRしていくことで立場を確立していきました。
スムーズなRPA導入を実現する「業務整理」– 株式会社シイエム・シイ 経営企画部 KAIZEN FARM事業推進室 佐々木友梨氏より
RPAは「導入」前の「計画」が大切!
RPAを導入する前に、どのようにロボットを動かしたいのか、どのような課題を解決したいのか、最初に計画を立てておくことが大切です。
計画は下記のように進めることをおすすめしています。
- 現場の実態調査:現場の業務量や仕事の進め方をしっかり把握することで、RPAに適した業務を抽出する
- 業務の最適化:ロボットがスムーズに動いていくために、業務の順序や利用フォーマットを見直す
業務整理の事例 | 青色決算書情報の転記 – 税理士法人畠経営グループの例
ロボット開発前にきちんと業務を整理することの重要性を感じています。実際にロボットが走り始めた後でも、業務を可視化し、言語化して残すことが大切です。実際に言語化することで、どこがロボット化できて、どこが人間ではないとできないのかも見えてくるので、計画を立てることがロボットをスムーズに運用していくカギだと思います。
まとめ
- RPA導入前に「業務整理」することで、どの業務をロボット化するのか優先順位をつけられる
- ロボットに引き継ぐ業務手順を整理することで、その後の導入がスムーズになる
以上、「確定申告業務で500時間削減できたRPA活用の秘訣とは?
税理士法人の事例を交えて3社対談形式でご紹介」のセミナーレポートでした。
この記事のまとめ
税理士業界で抱えている課題(人材不足・業務の属人化・テクノロジーへの対応力不足)は、RPA導入により解決に導くことができる
特に、繰り返しで判断が必要なかった定型業務はRPAに向いている。その部分をロボットに任せることで、人間はよりクリエイティブな仕事に時間をあてることができる
RPAを導入する前にしっかり業務整理し、ロボットに引き継ぐ業務を明確にすることでスムーズに進められる
セミナー完全版につきましては、ぜひ下記からオンデマンド配信をお申し込みください。より詳細な説明に加えて、質疑応答などもご視聴いただけます。
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また、今後もWebセミナーやすでに実施したセミナーのアーカイブ配信もご用意しております。ご不明点やRPAについてご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
Webセミナー一覧:https://rpat.tms-movie.com/seminar/
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